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Momiji
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直したよん
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そんな樹の上で黒い猫が昼寝をしている時、白い狐はびっくりした。だって、この樹の上で自分以外の他の動物を見たのは、初めてだったからだ。これじゃぼくが昼寝出来ないよ、と思ってすこし嫌な気持ちになったけど、同時に、いつもは誰も来ないこの樹の上にやってくるこの黒い猫は、一体どんな子なんだろう、とも思った。
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17-
この黒い猫はこの近くで暮らしているのかな。だとしたら、森のないこの辺で、どうやって食べ物を探しているんだろう。それとも、森からやって来たのかな。森から来る時に、血の気の多い人間をどうやって避けて来たんだろう。そもそも、この黒い猫はどうしてここに居るんだろう。たまたま気まぐれで来ただけなのかな、それともぼくと同じように、ここが好きなのかな。好きだとしたら、何が好きなんだろう。この風景が好きなのかな。それとも、とても気持ちのいい風が好きなのかな。そんなことを、白い狐は知りたいと思った。
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この黒い猫はこの近くで暮らしているのかな。だとしたら、おいしい実のなる木も、お魚の取れるつめたい川もない人間が住んでいるこの辺で、どうやって食べ物を探しているんだろう。それとも、ぼくと同じように森からやって来たのかな。森から来る時に、血の気の多い人間をどうやって避けて来たんだろう。そもそも、この黒い猫はどうしてここに居るんだろう。たまたま気まぐれで来ただけなのかな、それともぼくと同じように、ここが好きなのかな。好きだとしたら、何が好きなんだろう。この風景が好きなのかな。それとも、とても気持ちのいい風が好きなのかな。そんなことを、白い狐は知りたいと思った。
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19-
白い狐は、そんな自分にびっくりした。だって相手はあの猫である。普通だったら、逃げよう、とか、追い出してやろう、とか、そういった事を考えるはずなのだ。白い狐は、ぼくは頭がおかしくなってしまったのかもしれない、と思った。少なくとも、森の仲間たちにそんな事を言えば、きっと心配されたり、怖がられたり、避けられたりするかもしれない。ひょっとすると、森から追い出されてしまうかもしれない。そこまで考えてみたけど、白い狐はやっぱり、黒い猫の事がなんとなく気になった。ぼくと同じ場所がきっと好きなこの黒い猫が、悪い子なはずは無いような気がしたし、それなら仲良くだってなれる気がした。よく考えてみれば、森の仲間たちは人間の住む所へはけっして来ないし、近づこうともしない。森のみんなには黙っていれば、きっと…みんなに嘘を付くのは少し心がむず痒いけれど…ばれないだろう、と思った。
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白い狐は、そんな自分にびっくりした。だって相手はあの猫である。普通だったら、逃げよう、とか、追い出してやろう、とか、そういった事を考えるはずなのだ。白い狐は、ぼくは頭がおかしくなってしまったのかもしれない、と思った。少なくとも、森の仲間たちにそんな事を言えば、きっと心配されたり、怖がられたり、避けられたりするかもしれない。ひょっとすると、森から追い出されてしまうかもしれない。そこまで考えてみたけど、白い狐はやっぱり、黒い猫の事がなんとなく気になった。ぼくと同じ場所がきっと好きなこの黒い猫が、悪い子に違いないとはなんとなく思えなかったし、それなら仲良くだってなれる気がした。よく考えてみれば、森の仲間たちは人間の住む所へはけっして来ないし、近づこうともしない。森のみんなには黙っていれば、きっと…みんなに嘘を付くのは少し心がむず痒いけれど…ばれないだろう、と思った。
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そうなれば。どうやったら、黒い猫の事を知れるんだろう。猫には狐の言葉は届かないし、猫のことばも狐には届かない。だから、白い狐は、とりあえず、黒い猫の近くにいようと思った。そうすれば、きっと、この猫の事を少しずつでも知れるだろうと思ったからだ。
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でも。ぼくは黒い猫の事が知りたいけど、黒い猫はぼくのことが、狐のことが嫌いかもしれない。だって、狐が猫にひどい目に遭っているのと同じぐらい、猫は狐にやり返されているんだもの。だから、黒い猫にいきなり近づいたら、この子は逃げてしまうかもしれない。うーん、いつも猫を見ると逃げたいとしか思わないけれど、近づこうとするとじつは逃げるより大変なんだなあ。
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白い狐は、諦めて帰ろうかな、と思って後ろを振り向いた。…ううん、このまま帰ったら、この木に登るたびに、どうしてあの時帰っちゃったんだろう、って後で何度も思い出して、勇気を出さなかった今の自分を責めてしまうかもしれない。そう思って、やっぱり振り返った。そうだ。今日は樹の上でおやつのネズミを食べようと思っていたんだっけ。猫の好物だよね。いつもは奪われるのを怖がっているけれど、今日はこの子にあげてみよう。いくら相手が普段ひどい目に合わされている狐からでも、ネズミを貰ったら悪い気はしないはずだ。…たぶん。早く行かないと、あの黒い猫はどこかへ行ってしまって、もう二度と会えないかもしれない。そう思って、白い狐はゆっくりと、樹へと近づいて行った。
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白い狐は、諦めて帰ろうかな、と思って後ろを振り向いた。…ううん、このまま帰ったら、この木に登るたびに、どうしてあの時帰っちゃったんだろう、って後で何度も思い出して、勇気を出さなかった今の自分を、嫌いになってしまうかもしれない。そう思って、やっぱり振り返った。そうだ。今日は樹の上でおやつのネズミを食べようと思っていたんだっけ。猫の好物だよね。いつもは奪われるのを怖がっているけれど、今日はこの子にあげてみよう。いくら相手が普段ひどい目に合わされている狐からでも、ネズミを貰ったら悪い気はしないはずだ。…たぶん。早く行かないと、あの黒い猫はどこかへ行ってしまって、もう二度と会えないかもしれない。そう思って、白い狐はゆっくりと、樹へと近づいて行った。
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樹の上へ昇っていくと、最初黒い猫は風景を見ていて、白い狐には気がついていないみたいだった。白い狐が同じ枝に足を掛けると、黒い猫はこちらに気がついて一気に身構えた。赤い目が、すごくするどい。怖い。…う、うん、でもここまでは予想どおり。白い狐は、そこで申し訳なさそうにネズミを置いて、ゆっくりと、黒い猫から目を逸らさず、ゆっくりと後ずさった。
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いつもより大分早く来た樹の上には、まだ黒い猫はいなかった。黒い猫は人間に好かれているから、わざわざ早く来たりする必要はないのだろう。そもそも、黒い猫が今日も来るかどうかも、白い狐にはわからなかった。
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白い狐がしばらく樹の上でぼんやりしていると、人間のパレードが始まった。
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各々が色々な仮装をして練り歩いたり、同じ格好をして踊ったり、とくに決まった決まりみたいなものはなくて、それぞれの集まりでそれぞれ練り歩いたり、踊ったり。狐は人間に嫌われていて、棒で殴って森へ追い返そうとしたりするから、どうしても人間を好きになれないけれど、でも、パレードや踊りは賑やかで、見ているだけでも楽しいな、と思った。物語みたいに、ぼくも化けられたら、あの中に入って一緒に踊れるのに。
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各々が色々な仮装をして練り歩いたり、同じ格好をして踊ったり、とくに決まった決まりみたいなものはなくて、それぞれの集まりでそれぞれ練り歩いたり、踊ったり。人間は狐を嫌っていて、棒で殴って森へ追い返そうとしたりするから、どうしても人間を好きになれないけれど、でも、パレードや踊りは賑やかで、見ているだけでも楽しいな、と思った。おはなしみたいに、ぼくも人間に化けられたら、あの中に入って一緒に踊れるのに。
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しばらく白い狐はパレードを眺めていたけれど、黒い猫がいつもの時間になっても、それからしばらくたっても、もっともっとたっても、来る気配が無くて、すこし心配になってきた。パレードの日には、たくさんの食べ物も並ぶ。黒い猫はたくさん食べ物を貰って人間に頭を撫でられているから来ない…とかだと、いいんだけれど。
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しばらく白い狐はパレードを眺めていたけれど、黒い猫がいつもの時間になっても、それからしばらくたっても、もっともっとたっても、来る気配が無くて、すこし心配になってきた。黒い猫はお祭りに来たたくさんの人間にたくさん食べ物を貰ったり、頭を撫でられているから来ていない…とか、黒い猫はお祭りは嫌いだから今日は来ない…とかだと、いいんだけれど。
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そうしていると、黒い猫がやってきた。人間の使う食べ物の入れ物にたくさん食べ物を入れて、するすると樹を登り、白い狐と同じ枝に乗った。白い狐は、枝の先へ移動して、黒い猫のために場所を空けた。
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その時、となりから突然ウエッ、ウエッ、といった声が聞こえてきた。白い狐は慌てて起き上がると、黒い猫が何かを吐いているのが見えた。毛玉を吐いているのだろうか。ぼくも、毛づくろいで飲み込んだ自分の毛を吐いてしまうんだ。…でも、黒い猫はずっと吐き続けて、足取りもだんだん危なくなって、吐いたものの上に倒れてしまった。白い狐は、なにが起こっているのかは分からないけど、とにかく、黒い猫が危ないことだけは分かった。
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隣にある、黒い猫のくれた人間の食べ物を見る。暗くてよくわからないけれど、普段は見ない形の食べ物も沢山含まれていた。ひょっとすると、食べてはいけないものを食べてしまったのかもしれない。白い狐は、昔、人間の育てている野菜は狐にとっては毒で、最悪死んでしまうから畑から食べ物を盗んではいけない、と聞いたことがある。
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隣にある、黒い猫のくれた人間の食べ物の入った器を見ると、見慣れない形の食べ物も沢山入っていた。ひょっとすると、食べてはいけないものを食べてしまったのかもしれない。昔、人間の育てている野菜は狐にとっては毒で、最悪死んでしまうから畑から食べ物を盗んではいけない、と聞いたことがある。しかも、人間たちは野菜とかをそのまま食べるのではなくて、すりつぶして混ぜたりして、中に何が入ってないか分からなくしてしまうのだ
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ぼくが早く黒い猫の食べ物を見て、暗くなる前に気づいていれば…と思った。けれど、たとえ気づいても、猫にぼくの言葉は届かない。ぼくが黒い猫と仲良くなれても、それは森の仲間たちには言えない。そもそも、一緒に樹の上に登って風景を見るだけの仲じゃないか。黒い猫も、ぼくの事を友達だとも仲間だとも、きっと思ってない。たまに食べ物をくれる、残飯処理係。このまま見なかったことにして、何食わぬ顔で森に戻って、もう二度とここには来なければ、きっといつか忘れていつもの生活に戻れる。そんな考えが、白い狐の頭に浮かんできた。
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ぼくが早く黒い猫の食べ物を見て、暗くなる前に気づいていれば…と思った。けれど、たとえ気づいても、猫にぼくの言葉は届かない。ぼくが黒い猫と仲良くなれても、それは森の仲間たちには言えない。そもそも、一緒に樹の上に登って風景を見ていただけの仲じゃないか。黒い猫も、ぼくの事を友達だとも仲間だとも、きっと思ってない。たまに食べ物をくれる、残飯処理係。このまま見なかったことにして、何食わぬ顔で森に戻って、もう二度とここには来なければ、きっといつか忘れていつもの生活に戻れる。そんな考えが、白い狐の頭に浮かんできた。
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それでも。白い狐は黒い猫とまたここで、この樹の上で風に吹かれたいと思った。
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それでも。白い狐は黒い猫とまたここで、この樹の上で風に吹かれたいと思った。黒い猫を助ける理由は、それで十分だと思った。
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それなら。どうすれば助けられるか。たぶん、黒い猫は一刻を争う。森の仲間たちに相談する余裕は、たぶんない。あったとしても、まずぼくが黒い猫と友達だって説明して、助けて欲しいって言って、ぼくが頭がおかしくないことを分かってもらわないといけないけれど、きっと、仲間たちに分かってもらうにはすごく時間がかかる。だから、頼れない。
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